第6章
運営の説明は、記録と一致するのか
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ここまでの章で、SANAET の資金の出どころ・発行・分配・プール取引・焼却を、すべてオンチェーンの記録に沿ってたどってきました。この章では、運営(NoBorder)が X や公式サイトで公表してきた内容と、チェーン上で実際に起きたことを突き合わせます。
扱うのは「運営が自ら公表した事柄」と「オンチェーンで検証できる事実」だけです。第三者の報道や憶測は対象にしません。整合する点に加えて、チェーンの記録だけでは検証できない点も、そのまま区別して示します。
- 2/231. 発行(mint)
10 億枚を発行し、同日 mintAuthority を放棄(追加発行不可)。第3章
- 2/24〜252. 分配
45 ウォレットへ 2.8 億枚、各枠へ振り分け、Raydium プールへ 0.8 億枚を投入。第3章
- 2/25〜3/23. プールで取引(急騰 → 暴落)
ローンチ後に公称初期比 約41倍まで急騰 → 3/2 に約 −79% 暴落。第4章
- 5/20〜214. 回収
各枠の受取先・45 ウォレットが分配ウォレットへ一斉に返送。第5章
- 5/27 → 6/165. 集約 → 焼却
incinerator の口座へ集約後、6/16 に burnChecked で焼却。第5章
供給 10 億 → 約 8,526 万枚(−91.5%) - 7 月〜6. 補償(予定)
USDC での補償を公表。2026-06-28 時点で支払は未実行。
配分はうたい文句どおりか
- リクイディティは公称 10% に対し、実際には 8%にとどまり、公表値と食い違う
公式サイトの Tokenomics は、エコシステム 65%・コミュニティ 20%・リクイディティ 10%・チーム 5% の配分を掲げていました。これをオンチェーンの記録と突き合わせます。
前提として、チェーン上に「どのウォレットがどの枠か」という対応表はありません。ただしコミュニティ・チームなどの受取先は分配ウォレットから配られ、のちにそろって同じ分配ウォレットへ返送されており、独立した保有者の動きとは考えにくいことから、運営側の管理下にあるアドレスとみられます(経路は第3章・第5章)。以下は公称比率と実測の枚数を突き合わせたもので、ウォレットの用途そのものを確認したわけではありません。
コミュニティ(20%)公称比率に一致する 2 億枚の送金が確認できます。ただし用途は不明で、枚数の一致から「コミュニティ枠とみられる」という推定にとどまります。受取先ウォレットEu3ZE6Q7…E1kjyS
チーム(5%)同じく 5,000 万枚の送金が確認でき、比率は一致します。受取先ウォレットBzCDkgjr…PXtmWe
リクイディティ(10%)配分上は 1 億枚ですが、実際に Raydium プールへ投入されたのは 0.8 億枚(供給の 8%)でした。リクイディティで意味を持つのはウォレットへの配分ではなく市場(プール)へ入った量なので、公称 10% とは一致しません(残りはリクイディティ用ウォレットに残りました)。リクイディティ用ウォレット7WFJ9jvN…KqATNw
エコシステム(65%)コミュニティ 20%・チーム 5%・リクイディティ 10%(計 35%)を上の推測で当てはめると、残りの 65%(約 6.5 億枚)は必然的にエコシステム分になります(あくまで消去法)。
その 6.5 億枚が実際どう動いたかを見ると、オンチェーンで観測できるのは、2 月 24 日の 45 ウォレットへの配布 約 2.8 億枚、20M 受取・テスト配布などの少額、そして残り約 3.5 億枚は分配ウォレットに留保された、という流れです(45 ウォレットの一覧は第3章、その後の行方は第5章)。
クリフ・ベスティングは入っていたか
- オンチェーンで強制する vesting コントラクトは未実装(アドレス・プログラム ID の記載もなし)
- 満了前に一括返送できる状態で、実際 5 月に一括で戻されている
公式サイトの Tokenomics は、配分ごとに を設けると説明していました。チーム枠 5% は 6 か月クリフ+12 か月ベスティング、コミュニティ枠 20% は クリフなし+2 か月ベスティング(15 回に分割)という内容です。
しかし公式サイトの HTML には、これを強制する vesting コントラクトのアドレスやプログラム ID は記載されていませんでした。チェーン上を調べても、各枠の受取先に放出スケジュールをロックする vesting コントラクトは確認できません。
さらに実際の動きを見ると、クリフ・ベスティングの期間が満了する前の 5 月 20〜21 日に、チーム枠 5,000 万枚・コミュニティ枠 2 億枚は いずれも分配ウォレットへ一括返送され、5 月 27 日に焼却されています(第5章)。時間をかけて少しずつ放出された形跡はありません。
値動きは説明どおりか
- オンチェーンの日足はピーク 約 41.7 倍・3/2 に 約 −79%。報道の「約 30 倍・75% 超下落」と整合
初値から 約 30 倍まで上昇し、3 月 2 日に 約 75% 超急落した、と報道で伝えられていました(coinninjaなど二次情報)。
オンチェーンの日足(OHLCV・GeckoTerminal)では、ピークが $0.027805で公称初期価格の 約 41.7 倍、3 月 2 日の安値が $0.005835でピークから 約 −79%。報道の「約 30 倍・75% 超下落」という規模感と 整合しています(取引の詳細は 第4章)。
運営は本当に売っていないのか
- プール作成以降の 23,085 件を解析しても、運営側ウォレットのプール売却は0 件(暴落前の大量売却もなし)
- ただし買い量の約半数は CEX ホット経由で、取引所口座から別ウォレットで買った経路は原理的に追跡できない
急騰期に「運営がトークンを売り抜けているのではないか」という疑いが指摘され、運営はこれを否定していました。
実際の取引を見ると、プール作成以降の 23,085 件を解析した結果、Creator・分配ウォレット・チーム枠・コミュニティ枠の受取先・エアドロップ先 45 ウォレットのいずれも、Raydium プールでの売り(swap)は 0 件でした。暴落前の大量売却も確認されていません。この範囲では、運営の「売却していない」という公表と 整合します。
ただし、買い量の約半数は取引所(CEX)のホットウォレット経由でした。運営が本人確認済みの取引所口座から出金し、別のウォレットで買った場合、その経路はオンチェーン上では原理的に追跡できません。「運営が一切関与せず買っていない」とまでは、チェーンの記録だけでは断定できません(第4章)。
- 売り側 — 運営側とみられるウォレット(Creator・分配・中継・各枠・エアドロップ 45)について、プール作成以降の全取引から売り(swap)を抽出し、該当が出ないか照合
- 買い側 — buyer 1,546 ウォレットの初回購入前の SOL 入金元を 1 つずつ遡り、運営側ウォレットからの送金がないか突合(CEX 経由は追跡対象外)
運営が公表したウォレット
- 2026-03-03、運営は売却疑惑を否定し、管理ウォレットを ①ディストリビューター・②派生・③外部の 3 区分で公表
- ①②は運営自身の管理ウォレット、③(6 件)が唯一の外部配布。①〜③ともDEX 売却 0
運営側が管理しているウォレットから売却しているという事実が指摘されておりますが、そのような事実は一切ございません。 以下、①〜③が運営側が管理しているウォレットアドレス一覧です。
X で投稿を見るこの投稿(2026 年 3 月 3 日)で運営は売却を否定し、管理しているウォレットを次の 3 区分で公表しました。各区分を当方でオンチェーンと照合した結果も添えます。
① ディストリビューターウォレット全供給を集約し各ウォレットへ配った分配ハブ(本記事の「分配ウォレット」)。
② 派生ウォレット運営は「ディストリビューターから移動させた派生(ハッキング対策のため等)」と説明。第3章のエアドロップ 45 ウォレットや、各枠の受取先(relay200・チーム枠・リクイディティ用)もここに含まれます。いずれも①の配布・回収フローに属し、プールでの売却はありません。
③ 外部コントリビューター運営は「Japan is Back の協力者へ 6 回に分割して配分、売却制限なし」と説明。オンチェーンでは各受領額がちょうど ×6 で割り切れ(6 分割の裏取り)、実行されたのは第 1 回(1/6) のみ、6 件ともプールでの売却はありません。ただし一部は①へ返送されるなど、純粋な「外部」とは言い切れない動きもあります。
焼却は説明どおりか
- 5/27 に incinerator の口座へ 913,363,647 枚を集約(transfer)、6/16 に 914,738,449 枚を burnChecked で焼却
- 総供給は 10 億枚 → 約 8,526 万枚(−91.5%)に確定。公表の「回収・焼却」と整合(LP ロックではない)
運営は、騒動後に各枠へ渡ったトークンを回収し、供給の大半を焼却する方針を公表していました。
記録をたどると、5 月 20〜21 日に配布先・各枠から分配ウォレットへ返送が行われ、5 月 27 日に分配ウォレットから焼却アドレス(incinerator)の口座へ 913,363,647 枚が集約されました。ただし供給が実際に減ったのは6 月 16 日で、incinerator 保有分 914,738,449 枚が burnChecked で焼却され、総供給は 10 億枚から 約 8,526 万枚に確定しています。公表された「回収・焼却」の方針と 整合します(Raydium プール作成時の LP ロックではない。詳細は第5章)。
補償は確かめられるのか
- 基準となるスナップショットの保有リストはオフチェーンで非公開
- USDC の補償支払は 2026 年 6 月 28 日時点で 0 件(支払開始の公表は 7 月)。実行されるかは今後の記録待ち
運営は補償について、1 枚あたり 0.01331 USD 相当を Solana の USDCで支払うこと、補償の基準時点として 2 回のスナップショット(3 月 2 日・3 月 4 日)を用いること、スマートコントラクトでの支払を予定していることを公表しました。
- スナップショットは、特定時刻の保有者リストを運営がオフチェーンで作成するものです。チェーン上に「スナップショット」という取引は存在せず、補償上限となる保有リストは公開されていないため、その内容はオンチェーンだけでは検証できません。
- USDC の補償支払は、運営ウォレットからの支払 transfer を監視した結果、2026 年 6 月 28 日時点で 0 件(支払開始の公表は 7 月)。実際に公表どおり支払われるかは、今後のオンチェーン記録を待つ必要があります。
答え合わせの結論
価格の値動き・供給の焼却・プール内での運営の無売却は、公表とオンチェーンの記録がおおむね整合します。一方で、リクイディティは公表値と食い違い、クリフ・ベスティングは強制する形で実装されておらず、補償(スナップショットの保有リスト・USDC 支払)はチェーンの記録だけでは検証できません。
この章でわかったこと
- 値動き・焼却・プール内の運営の無売却は、公表とオンチェーンの記録がおおむね整合している。
- 配分は枚数の比率こそ公称に近いが、リクイディティは公表値と食い違う。受取先も運営側とみられ、独立した第三者への配布とは確認できない。
- 公表されたクリフ・ベスティングは、オンチェーンで強制する vesting コントラクトとしては確認できず、ロック満了前に一括で返送・焼却された。
- 補償のスナップショット保有リストと USDC の支払は「チェーンの外」にあり、現時点では検証できない。
- ウォレットと人物の結びつきや、取引所(CEX)経由で行われた操作は、オンチェーンの記録だけでは断定できない。